固定残業代と「みなし残業代」は、一般に同じような定額払いの仕組みを指します。
違いを調べるときは、呼び方よりも、通常の給与と分けて示された金額、何時間分か、何の残業代を含むか、足りない分の支払い方を見ることが大切です。
たとえば「月給30万円、固定残業代を含む」だけでは、内訳が分かりません。
「基本給25万円、20時間分の固定残業代5万円、超過分は追加支給」なら、確認の出発点がそろいます。
さらに、その時間数と金額が実際の賃金計算に合うかを見ていきます。
固定残業代とみなし残業代は、呼び方より中身を見る
固定残業代は、一定時間分の時間外労働・休日労働・深夜労働などの割増賃金を、毎月定額で支払う方法です。
「定額残業手当」「みなし残業代」「見込み残業代」などの名前で説明されることもあります。
基本給とは別の手当として払う形と、基本給の中に組み込む形があります。
どちらも、通常の労働に対する賃金部分と、割増賃金として払う部分を判別できることが必要です。
「業務手当」「営業手当」という名前の場合も、何に対する支給なのか、契約書や説明を照合します。
求人を見るときは、次の三つが読み取れるかを確認します。
固定残業代が実際に有効な取り決めになっているかは、書面だけでなく説明や勤務状況なども含めて判断されます。
- 固定残業代を除いた基本給はいくらか。
- 固定残業代はいくらで、何時間分をどう計算したものか。
- 対象時間を超える分など、不足する割増賃金を追加で支払うか。
月給の総額が同じでも、基本給・固定残業代・そのほかの手当の内訳は会社ごとに異なります。
賞与や退職金などを基本給に連動させている会社では、その計算基準も比べる材料になります。
「みなし労働時間制」は、給与の定額払いとは別の話
名前が似ている「みなし労働時間制」は、労働時間をどう算定するかの制度です。
一定の要件を満たす場合に、決められた時間を働いたものとして扱います。
固定残業代は賃金の支払い方なので、確認する対象が違います。
| 比べるもの | 固定残業代・みなし残業代 | みなし労働時間制 |
|---|---|---|
| 何を決めるか | 一定時間分などの割増賃金を定額で払う | 条件に沿って労働時間を算定する |
| 主に見るもの | 金額、時間数、対象範囲、不足額の支払い | 制度の種類、対象業務、必要な手続き |
| 例 | 月20時間分の固定残業代 | 事業場外みなし労働時間制、専門業務型・企画業務型の裁量労働制 |
事業場外みなし労働時間制には、事業場の外で働き、労働時間の算定が難しいという条件があります。
営業職や在宅勤務という職種・場所だけで決まるのではなく、具体的な指示や時間把握の状況を見ます。
裁量労働制にも対象業務や制度ごとの条件があり、労使協定・労使委員会の決議、本人の同意など、必要な手続きを確認します。
求人に「みなし」とあったら、定額の残業代の話なのか、労働時間の算定制度も使うのかを分けて聞くと整理できます。
残業が0時間・少ない月・多い月で、支給はどう変わる?
月ごとに固定残業代を支給する契約なら、対象となる残業が少ない月も、原則として取り決めた額が支払われます。
たとえば月20時間分を定額で支払う条件なら、残業0時間の月、5時間の月にも、その月の固定額を支給するのが基本です。
ここでいう20時間は、定額で支払う賃金の算定に使う時間です。
日々の業務は勤務条件や指示に沿って行います。
業務を終えた日に、固定時間を消化するためだけに居残る必要はありません。
欠勤・休職に伴う控除などは別の条件なので、残業が少ないことによる減額と分けて賃金規程を確認します。
一方、実際の労働から計算した割増賃金が固定額を上回る月には、不足分の追加支払いが必要です。
月20時間分に対して対象となる残業が28時間なら、通常は超えた8時間分を追加計算します。
確認の中心は、最終的に支払われた金額が、法律に沿って計算した割増賃金に足りているかです。
固定時間数だけを見ると、基礎となる賃金の変更や、対象に含まれない深夜・休日の割増を見落とすことがあります。
少なかった月と、多かった月を相殺しない
月単位の固定残業代では、各月の勤務と賃金を対応させます。
4月の実績が5時間で、設定20時間より15時間少なくても、その15時間を5月に持ち越して追加支給分から差し引く扱いにはしません。
5月は5月の実績から、不足する賃金を計算します。
給与明細と勤怠記録を並べるときは、締め日と支給日もそろえて見ます。
今月の給与に前月の勤務分が反映される会社なら、「受け取った月」と「働いた期間」を取り違えないようにします。
固定残業代の金額を、具体例で確かめる
月給制では、算定基礎に含まれる月額賃金を、1年間における1か月平均の所定労働時間で割り、1時間あたりの賃金を出します。
所定労働時間は、会社と取り決めた通常の労働時間です。
月平均の時間数は会社の勤務日数・時間から決まるため、自分の契約の数字を使います。
例として、算定基礎の月額賃金26万円、月平均の所定労働時間160時間、深夜・法定休日の労働を含まない法定時間外労働20時間分、割増率25%とします。
| 計算するもの | この例の式と金額 |
|---|---|
| 1時間あたりの賃金 | 260,000円÷160時間=1,625円 |
| 20時間分の割増賃金込みの額 | 1,625円×1.25×20時間=40,625円 |
| 28時間働いた場合の追加8時間分 | 1,625円×1.25×8時間=16,250円 |
この条件で固定残業代を40,625円と定めた例なら、28時間働いた月の対象賃金は合計56,875円です。
計算途中の2,031.25円を先に丸めずに示しています。
実際の給与計算では、認められる端数処理と会社の規定も照合します。
算定基礎には、基本給のほか、対象となる各種手当も含めます。
家族手当や通勤手当など法律上除外できる賃金は、名称だけでなく支給の実態で判断します。
たとえば距離に関係なく一律支給する通勤手当は、算定基礎に入る扱いです。
金額が合わないときは、基礎の賃金・月平均時間・対象時間数・割増率の順に確かめます。
深夜や休日の分は、固定額にどこまで含まれる?
契約が「時間外労働20時間分」としているのか、「深夜労働の割増も含む」としているのかで、確認する範囲が変わります。
時間外・深夜・法定休日のどの対価なのか、金額と計算方法が分かる説明を読みます。
法定時間外労働は原則25%以上、22時〜翌5時の深夜労働は25%以上、法定休日労働は35%以上の割増が必要です。
時間外と深夜が重なれば合計50%以上、法定休日と深夜なら合計60%以上となり、月60時間を超える法定時間外労働の部分は50%以上です。
上の計算例は、これらの別条件を含まない例です。
会社が休みにしている日と法定休日も区別します。
土日休みでも、どの日が法定休日かを勤務表や就業規則で確認します。
対象外の割増や固定額を上回る分は、給与明細のどの項目で払われているかまで見ると、支給の抜けを確認しやすくなります。
45時間・60時間という設定は、働き方をどう読む?
固定残業代の時間数は給与の設定で、実際の残業には、36協定や法律の上限が別に適用されます。
一般の上限は原則月45時間・年360時間です。
臨時的な特別の事情がある特別条項付きの協定でも、年720時間以内、時間外と休日労働の合計は単月100時間未満・2〜6か月の各平均80時間以内などの制限があり、月45時間を超えられるのは年6か月までです。
業務によって適用される上限・特例が異なるため、勤務先の制度も確認します。
求人の設定時間だけで職場の良しあしを決めず、なぜその時間数なのか、配属先の実際の平均残業、繁忙期、超過分の支給実績を聞くと、働き方を具体的に考えられます。
基本給と固定残業代の割合、試用期間の条件、賞与・昇給・退職金の計算基準も合わせて見ます。
最低賃金と比べる際には、時間外などの割増賃金や、対象から除く手当を分けて時間額に直します。
固定残業代を含む月給の総額だけを、最低賃金の判定に使わないことが大切です。

給与明細で疑問が出たら、契約・勤務実績・支給額を並べる
まず労働条件通知書・雇用契約書と賃金規程で固定額の条件を確かめ、同じ計算期間の勤怠記録と給与明細を照合します。
出退勤と休憩に加え、指示された準備・後片付け・待機なども、会社の指揮命令下にあった実態に沿って記録します。
担当者へは、「何月の勤務の、どの割増を、どの給与項目で計算したか」と具体的に聞きます。
説明の日付・担当者・要点も控え、契約と口頭説明が違う場合は書面の内容を確かめます。
資料は会社の情報管理ルールに配慮し、自分の労働条件や実績を確認できる形で保管します。
不足額や労働時間の食い違いが解決しない場合は、労働基準監督署、都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどへ相談できます。
契約書・明細・勤務記録・会社の説明をそろえると、名称だけの疑問から、実際の支給内容の相談へ進めます。
まとめ
固定残業代とみなし残業代は、一般に定額の割増賃金を払う仕組みを指します。
通常賃金と固定額の内訳、対象時間と労働の種類、不足分の追加支払いを一組で確認しましょう。
残業が少ない月も原則として固定額を支給し、実際に必要な賃金がそれを超える月は不足分を追加します。
みなし労働時間制との区別、各月の勤務記録、給与明細との対応まで見ると、自分の条件を読み解きやすくなります。
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- 定時と終業時間は何が違う?残業を判断するときの見方:所定労働時間と法定時間外、実際の勤務記録を整理します。
参考資料
情報確認日:2026年10月17日。
個別の支給条件や制度の適用は、契約・勤務実態に沿って確認してください。
- 厚生労働省:固定残業代の支払いと労働条件の明示:呼称、通常賃金との区別、不足額、求人の記載。
- 京都労働局:事業主向けFAQ「職業紹介・求人」:残業の有無にかかわらない定額支給と表示。
- 厚生労働省:割増賃金の計算:算定基礎、月平均所定時間、割増率、端数処理。
- 長崎労働局:労働基準法のあらまし「残業代・その2」:固定残業代の不足額と翌月の相殺。
- 厚生労働省:労働時間・休日:みなし労働時間制、36協定、時間外労働の上限案内。
- 厚生労働省:時間外労働の上限規制:月45時間・年360時間と特別条項の上限。
- 厚生労働省:最低賃金制度のFAQ:比較から除く割増賃金・手当。